義理の弟が、飯田市で飲食店をオープンした。
私は、嫁の仕事の帰りを待ち飯田市へ向かう準備をする。サプライズが好きな私は仕事から帰って来た嫁を連れて、鈴木家に内緒で義理の弟の店「藍花」を目指す為、86に火を入れる。充分に暖機しセブンイレブンでモンスターを購入し、ガソリンスタンドにて86にハイオク満タンを振る舞う。
「ヨシ、戦闘準備OK。」
私は心の中で、チャック・イェーガーを3回唱える。私のルーティーンだ。
国道151号線へ向かうにつれて、灯が減っていく。暫く走ると、三遠南信に入る。ココを毎回走る度に強く願う。早く、飯田市と開通してくれ!と。以前、飯田市のタクシーの運転手に言われた事がある。
「三遠南信は、一生開通しないよ。飯田市は今、リニアだから。」と。
三遠南信も終わり、また外灯の少ない山道へ戻る。山道を暫く走ると、フッと気付く。路面が濡れてる?私は、警察24時というテレビ番組が頭を過ぎる。高速道路にて、雨の中車線変更する時スピンして事故を起こした86を。私は減速し、安全運転に徹する。途中、コンビニに寄りトイレ休憩をし、元親族で友達のユッキーに連絡する。
「今、飯田市に向かってるから、今夜呑もうぜ。」タイミングの悪い事に、ユッキーは松本に居た。母親の実家へ墓参り。なんて、親孝行な息子だろうと思う私だが、嫁は似合わない事をするなぁ〜と呟いていた。私は再び藍花を目指す。安全運転に努めるも、直ぐに前の車に追いついてしまう。新山を降る頃、私達の行く手を憚かるかのように霧が発生していた。私は、更に減速する。阿南辺りから、民家が増える。私は何故か安堵する。飯田市はもう少しだ!私は、奮起する。飯田市に入ると嫁が、
「花屋に寄りたい。」
と言い出した。私は嫁に、店はイオンの裏だからイオンで花を買う事を薦める。
イオンに着き花屋を探すと、花屋は既に終わっていた。しかし嫁は、花屋の従業員がまだ居る事を見逃さなかった。花屋の従業員に頭を下げ、何とか花を購入する事が出来た。そして、藍花へ向かう。
店の中へ入ると、身内は義理の弟ユージ君意外は居なかった。私は少々ガッカリしたが、ユージ君は鳥肌で歓迎してくれた。腹ペコの私はカウンターに座り、生ビールを頼み義理の母、美鈴さんを呼び出す。先程まで店に居たらしいが、帰ってしまったらしい。酔いも回った頃、美鈴さんが現れた。オイオイ、素面かよ。呑みに誘うも、家呑みを薦められる。私は渋々、鈴木家へ向かう。
鈴木家で美鈴さんと呑むも、美鈴さんが明日仕事の為、宴は早々に終了し眠りに就く。
朝目覚めると、嫁が藍花へランチを食べに行く約束をしていた。私はランチを、松坂で松坂牛を食べに行く予定だったが、まぁユージ君の開店祝いだしランチは藍花で良いかっ!
タクシーで、昨晩店に置いて来た86を取りに向かう。外は、雨が土砂降りでタクシーの中は運転手が大声で喋っている。早く藍花に着いて欲しいと、心から願う。藍花に着き、86で再度鈴木家へ向かう。
飯田市は坂が多い為か、それとも86を店に置き去りにして拗ねているのか、運転がいまいち芳しく無い。嫁は朝から酒を呑んでいる為、私の機嫌も余り宜しく無い。私は、お昼まで鈴木家でゆっくりし藍花へ向かう。店に入ると、ユージ君の父親が出迎えてくれた。店内を見渡すと、店員の殆どがユージ君の身内だった。ユージ君の人柄が伺える。昼食を終えてユージ君へ、またねと伝え店を去る。
嫁に、
「帰るゾ。」
と伝え帰路に着く。
嫁は酒を呑んでいるせいか、常に上機嫌である。
昨晩イオンへ花を買いに行った時に、タピオカ屋を見つけていた。
イオンの中にあるタピオカ屋に向かうと、ガラガラだった。名古屋駅では、長蛇の列だったのに。ブームが去ったのか?飯田市では需要が無いのか?私はタピオカを飲むチャンスだと思い買いに行く。
飲んでみるも、テレビで騒ぐ程美味しいモノで無かった。とても残念だ。
帰り道、またしても雨が降る。が、暫くしたら止んだ。また、路面が濡れた為安全運転を心懸ける。私は、アスファルトもタイヤも信用していない。私がゴールド免許なのも、このお陰かもしれない。
ようやく家に着くと、私は安堵した。嫁は助手席で爆睡していたが、不思議と怒る気にはなれなかった。私の嫁は、良く頑張ってくれている。しばし戦士の休息だ。