宿のチェックアウトを済ませる。この時、嫁が失くした部屋の鍵の事を伝え謝罪する。そしてお土産売場へお土産を買いに。私は、旅行のお土産を毎回会社へ買って帰る。私は、お土産を買って帰るのが好きだ。
センスの問われる作業だ。ハズレは許されない。
途中、朝市なるモノをやっていたがお土産売場で売っている物とカブる。しかも、お土産売場の方が安い。朝市の存在意義に、疑問を持つ。
後日、今回のお土産がハズレだった事を、この時の私はまだ知らない。
私は、荷物とお土産を86に乗せ今日の目的地、彦根城を目指す。琵琶湖周辺を走らせる。嫁は、琵琶湖が初めてらしく、暫く琵琶湖を眺めていたが直ぐに飽きてしまう。琵琶湖周辺をサイクリングしている人が多い。私もサイクリングしていたから理解できるが、日本は自転車を走らせる道が無い。歩道を走らせれば、歩行者に迷惑がかかり車道を走らせれば車の迷惑になる。今更、自転車専用道路を造るのは不可能だろう。自転車乗りが、とても可哀想である。しばらく行くと、彦根城に着く。この城の良い所は、有料ではあるが駐車場が完備されているトコだ。駐車場完備されている城は、意外と少ない。
「さぁ、国宝五城彦根城だぁ!」
私は、嫁に檄を飛ばす。
彦根城は、門がとても立派だ。思わず、本丸も期待してしまう。ドコを見ても絵になる。
素晴らしい。嫁は、本丸をとても楽しみにしているようだった。
「私も、初めて来た時はそうだったよ。」
と嫁に伝えると、嫁は珍紛漢紛だった。
お土産屋付近に、喫煙所があった。
彦根城の、細かな気遣いに私は感服する。
一服を済ませ、本丸を目指す。
本丸を見た嫁の反応は、私の予想を裏切らない。
嫁のガッカリ感が、半端無い。
そんな嫁を連れて、いざ本丸の中へ。
本丸へ入ろうとすると、彦根城のTシャツを着た人達に呼び止められる。
無料で写真を撮ってくれると。気に行ったら、買ってくれとの事。本丸を見て周るうちに、現像を済ませると。
私は写真を撮って貰い、本丸の見学をする。
本丸の中はとても空いていて、ゆっくり見学する事ができた。当時の大工の技術の素晴らしさを、垣間見る。今程、道具や重機の整っていない時代に、どのようにして建造されたのか、妄想するのが私は大好きだ。本丸を出ると、写真が出来上がっていた。
写真を見ると、悪意のある写真だった。私が、とても不細工に撮れていたからだ。撮り直しを要求するも、簡単に拒否された。購入の選択を迫られる。私は、戒めの為に写真の購入を決める。玄関に飾って、自分を戒めようと思ったからだ。
そして玄宮園に向かう途中、ひこにゃん登場をアピールしているお姉さんがいた。
私が初めて彦根城へ訪れた時、ひこにゃんは絶大な人気を誇っていた。今は、見る影も無い。
私は、流行りには廃れがある事を再確認する。
玄宮園は、素晴らしい庭だ。素人の私にも解るレベルだ。
私の義理の父親は、庭造りが好きだ。嫁に、玄宮園の画像を義理の父親に送るように促す。
昼食を摂る為、松坂へ。
松坂牛は、旅行中のドライブを頑張った私への御褒美だ。私の行着けの和田金へ、86を走らせる。
高速道路へ入る前に、ガソリンを入れたかった私は、インターチェンジ手前のガソリンスタンドで、86にハイオクを振る舞う。私達だけが、御馳走に在り着く訳にはいかない。
86にハイオクを振る舞っている途中、ガソリンスタンドのオジサンが、86の登録番号について尋ねて来た。私は、
「矢沢永吉さんのファンのため、8ヤ3ザ0ワ。」
だと伝えると、オジサンは振り向き帽子を指差す。
帽子にE.YAZAWAのバッジを付けていた。
私達の間に、あまり多くの言葉は必要無かった。
私は、この距離間が大好きだし、とても大切にしている。
私の気分はとても良く、86を軽快に走らせガソリンスタンドを後にする。
松坂に入る頃、既に正午を過ぎていた。コンビニに寄り、モンスターを購入。すると嫁が、無くした宿の鍵をバッグから発見する。
私は直ぐに、宿に連絡して郵送する旨を伝える。
コンビニで、レターパックを購入しその場で宿へ郵送した。そして、和田金へ予約をすませ目的地へ86を走らせる。
この和田金は初代社長の和田金兵衛さんの
「良い肉で貫け。」
という言葉を守って、自社牧場を持ち安定した牛肉の提供をしている。とても素晴らしい仕事をなされているお店だ。
和田金で少々待ち、松坂牛と対面する。私の顔がニヤける。
味は、語るまでも無い。普段少食の嫁も、食が進む。私の疲れは、フッ飛んだ!
毎回、美味しい牛肉をありがとう。そんな気持ちで、いっぱいだ。
そして、帰路に着く。高速道路に入ると、直ぐに覆面パトカーを発見。嫁は全く気付いていない。私は、嫁の危機管理能力の低さを疑う。私は、安全運転を自宅まで心懸ける。嫁、助手席で爆睡。しかし松坂牛を食べた私は、不思議と気にならなかった。
今回の旅行の総走行距離3日で1348キロ。
私は思ったより伸びていない距離に、体の疲れと比較して身体の衰えを感じた。