ある朝、私は通勤していた。
高速道路の追越車線を走行していると、数ヶ月前に圧倒的な性能差でチギられたベンツとBMWが、仲良く一般車線を走行していた。
ベンツ&BMWを追抜き様、運転手を横目で見るとどちらも年配の方だった。ひょっとして、2台は友達同士なのだろうか?
私の小さい頃、まだ車はステータスだった。
ベンツやBMWに乗れる人達は、人生の成功者であるという感覚が、私にはまだ残っている。
故に、私はこのベンツ&BMWに乗る運転手には、軽く敬意を持ってしまう。
私もいつかは、其方側へ行ってみたいモノである。が、意外といつかはやって来ないという事も知っている。
追抜きルームミラーに目をやると、私の86の背後にピタッとベンツ&BMWは貼り付いていた。
私は、不敵に笑みを浮かべる。
前回のリベンジの瞬間がやって来た。
前回の私とは違う。何しろ、今の私の86にはスーパーチャージャーと言う秘密兵器が搭載されている。
私は、6速に入れていたギアを5速に落としアクセルを踏み込む。当り前の事だが、前回とはまるで加速が違う。そして6速へギアを入れて、更にアクセルを踏み込む。どんどん力強く加速して行く。
私は、こんな素晴らしい86を造ってくれた、トヨタ&佐藤商会に心から感謝している。
スピードに酔っている私が、ふとルームミラーに目をやると背後に貼り付いていたベンツ&BMWは、姿を消していた。
これは勝利なのか?それとも、途中下車したのか?真実はわからないが、私は都合良く勝利したと思う事にした。
次は、マセラティのグランカブリオだ。