私は、車検後の86の調子を診る為に86で日帰り旅行に出かける事にした。
行き先は、熱海城だ。
コレには、理由があった。
職場の喫煙所にて煙草を吹かしていると、上司の森さんが煙草を吸いに喫煙所に入って来た。
どうやら、休日に熱海に行って来たらしい。
そんな森さんが、
「熱海城、良かったよ。」
熱海城の存在を知らない私は、
「熱海に城あるんですか?」
と返答すると、森さんは
「城好きなくせに、熱海城も知らんのか?」
と、鬼の形相をし怒鳴りつける。
この時私は、決心する。
必ず熱海城へ行くと。
当日早朝、私がガソリンを入れている間、嫁はコンビニでハイボールを買っていた。朝から、ハイボールとは嫁には畏れ入る。ガソリンを満タンにし、熱海へ向かう。
助手席に嫁を乗せている為、安全に運転する。
熱海に近付くにつれ、嫁が酔いだす。
おいおい、勘弁してくれ。
伊豆縦貫道を降りると、急な勾配の下り坂が続く。
恐るべし熱海、こんなに険しい道のりだったとは!
私は、車もバイクも山道が嫌いだ。危険がたくさん転がっているからだ。周囲には好んで山道に行く輩がいるが、私には理解不能だ。
熱海に着く頃には、私の精神はズタボロになっていた。帰りの道のりの事を考えると、憂鬱になる。
熱海城が見えだすと、嫁のテンションが上がる。
私は、森さんから
「熱海城へ行くなら、ロープウェイだ!」
と言われていた。
ロープウェイの乗り場を探すが、なかなか見つからない。しばらく熱海城付近を徘徊していると、ロープウェイ乗り場を発見。
私は、安堵した。
86を駐車場に停め、ロープウェイ乗り場でチケットを購入。次いでに、秘宝館のセットチケットを勧められ、嫁にどうするのか聞くと秘宝館へ行きたいとの事。
ロープウェイに乗ると、アナウンスで世界1短いロープウェイと紹介があった。しかも、後楽園ホテルが目の前にあり、熱海の景色がイマイチだった。
雨が降る中、熱海城を目指す。
アッと言う間に、熱海城に着く。
私の熱海城の感想は、方向性が見えない。
何処へ向かっているのだろうか?この城は、何でも有りだな。
ただ、一階の甲冑&日本刀の展示は楽しめた。私は、日本刀が大好きだ。とても、美しい。
隣の、トリックアート迷宮館へも足を運ぶ。
嫁が写真撮影のセンスが無い為、全然楽しめない。
そして秘宝館へ。
秘宝館は、久しぶりだった。
昭和の香りがする。
嫁はイメージと違ったらしく、眉間にシワが寄る。
ロープウェイに再度乗り帰って来ると、腹が減っていた。ロープウェイ乗り場の向かいの浜焼きの店に入る。
嫁の第一声が、
「ハイボール、濃いめで!」
まったくコイツは!
私も呑みたかったが、飲酒運転になる為我慢。
私は、贅沢に海鮮丼、アラ汁、アワビのバター焼きを注文。嫁は、ハイボール、ホタテのバター焼き、唐揚げを注文。
熱海で唐揚げ?やれやれだぜ。
帰りに、また酷い山道を走る。今度は上り坂だ。坂道発進が苦手な私は、信号が赤にならないよう祈りながら走る。静岡市の久能山東照宮へ86を走らせる。
嫁、助手席で爆睡。まるで、お姫様だなっ。静岡市に着くとイチゴ狩り通りは、全て閉店していた。
残念だ。
久能山東照宮へ着くと助手席の嫁を起こす。
私は、嫁に
「さぁ、登るぜ!」
雨で石段が濡れている為、クロックスの私は滑りやすい。
気を付けながら石段を登るも、振向くと嫁はかなり遅れをとっていた。
私よりも、9つも若いのに。
アッと言う間に、料金所に着いてしまう。
まだまだ私も、捨てたものではない。
嫁を待っていると、どうやら嫁は途中で吐いてしまったらしい。
私は嫁に、
「上で家康さんの遺骨があるから、謝ってくれ。」
と悟す。
全く、人の墓で吐くとは困ったモノだ。
登り切ると、雨は土砂降り。
お陰で、私と嫁はぐっしょりだ。
急いで86に乗り込み、帰路に着く。
途中、牧之原のSAに寄る。
嫁は、
「熱海は泊まりで来たいね。」
と言うが、私は行く前から気づいていた。日帰りは、キツい事に。