私の86感

86のある暮らし

宿敵現る

1年ぐらい前、私の職場に異動して来た鈴木G長。

話しているうちに、自宅が近所である事が判明。

私は、プライベートまで監視されている様で嫌だったが、人物的には憎めない人柄だった為、いつの間にか仲良くなっていた。仲良くなっている気でいるのは、私だけなのかも知れないが。

私は、彼の所有する車を見て驚いた。

覆面パトカーと同じ車だったからだ。色まで一緒とは、畏れ入る。

度々帰りが一緒になるが、私の心中は穏やかでは無い。

私は、鈴木G長に

「いい加減、車替えて下さいよ~。生きた心地がしない。」

と進言するも、毎回笑顔で交わされる。困ったモノだ。

そんなある日の帰り道、会社を出て1個目の信号機で鈴木G長の乗るクラウンに出会す。

私は距離をとって走行するが、私のホームコースでもある地蔵峠で千切られそうになる。着いて行くのにいっぱいいっぱいだ。

こんな近くに、好敵手がいるとは!

灯台下暗しとは、よく言ったモノだ。

ココで千切られては、地蔵峠の白い閃光と謳われた私の沽券に関わる。

夜間だったが、条件は相手も一緒だ。言い訳にはならない。

私は、右へ左へハンドルを切りながらも、アクセルを踏み込む。

何とかクラウンのテールランプが消えなくて済んだ。私のプライドも保たれた。

そして、高速道路へ進入。

私は、出鼻から挫かれる。

彼にとって、ETCレーンなど関係ない。

アクセルも緩めず、ETCレーンに突っ込んで行く。

私が高速道路へ入ると、彼のクラウンの姿が既に無かった。

私はパトカーを気にしながらも、アクセルを踏み込む。

しばらく86を走らせると、彼の車か覆面パトカーか悩む私がいる。

全くもって、迷惑な話だ。

私は距離をとって警戒しながら、クラウンの背後に着く。

しばらく追走すると、前が詰まっている。

前方のクラウンは、赤灯も付けずに一般車線から抜きにかかる。

私の中で、クラウンが鈴木G長だと確信する。

私は、アクセルを踏み込む。

2台の車は、猛スピードで自宅まで走らせる。

なかなか良い走りをするではないか。クラウンも鈴木G長も。

久しぶりに、楽しい夜だった。

翌朝、鈴木G長も気付いていた様で。

その夜を境に、お互いの走りを認め合う様になった。

が、毎晩は勘弁願いたい。

命がいくつあっても足りない。

そう思わせる走りだった。

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