前回熱海へ行った時、フロントガラスに飛び石を喰らった。
私は、内山にリペアの依頼をする。
その時内山は、
「今なら、車高落とせますよ!」
どういう事か、内山に説明される。
86の車高を落とすのに、ウインカー下部に黒いパネルを貼って、ウインカーの最低地上高を保つという手法だったが、前工場長が
「グレーだね。」
の一言で却下された。
今回工場長が変わり、新工場長も86に乗っておりこの手法で車高を落としている。
しかも、86GRMNもこの手法を採用しているらしい。
工場長が変わると、ルールも変わるのか?
世の中は、不条理だなっ。
私は、内山に車高下げを依頼した。
作業は、2日間かかるらしい。
作業前日の夜、内山は代車を用意して私の86を取りに来た。
今までは、内山のプリウスを代車として使用していたのだが、新車でプラドを購入してから代車を用意するようになった。
私の運転技術を信用していないのか?ゴールド免許所持者だぞ。
臆病な私は、内山に聞く事ができない。
代車は、CHRである。
私は、今売れているCHRに興味があった。これは、良い機会だ。
内山は、
「満タン返しで、お願いします。」
私は、内山の得意気な顔に悪意を感じた。
翌朝、CHRに乗り込む。
86に比べて乗り込みやすい。車高が高く視界が良く、利便性は遥かに86を上回る。
高速道路に乗ると、加速が悪い。
危うく、後方から来る車に突っ込まれそうになる。
これは、しばらく慣らしが必要だなっ。
しかし次の瞬間、私は感動を味わう。
何と、死角に入った車を検知しドアミラーで運転者に教えてくれる。
車の進化に驚きを隠せない。
私は、この車で事故る気がまるでしない。
オートマのお陰で、運転が楽過ぎてつまらない。
長い運転時間だと眠くなってしまう。
緊張感のある運転を心掛ける私には、不向きだと確信する。
まぁ、2日間の我慢だ。
そして2日目の夜、内山が86に乗って現れる。
内山の第一声、
「保安基準ギリギリまで、車高を落としましたよ。」
私は86に目をやると、気付かないレベルだった。
私は思わず
「ドコが?」
すると、内山はタイヤハウスとタイヤの間に指を入れて
「タイヤハウスとタイヤの間、指2本入らないですよ。」
と一生懸命にアピールする。
私もソコは気にしていたが、86を見て気付かないレベルでは仕方ないのだが。
内山君、小局ばかり見ないで大局を見ようよ。
と言いかけたが、一生懸命にアピールする内山君が哀れに見えたので止めた。
これは私の持論だが、人間25歳辺りを超えると良くも悪くも変われなくなる。それは、社会に出て5・6年で人は8割がた完成するからだ。周囲の影響が大きいと思われる。
私も気を付けて心掛けてはいるが、なかなか変われない。
心掛けてない人は、もっと変われない筈だ。
残念な内山を、私は見送った。
次の日会社へ乗り付けるが、予想通り誰一人として気付かない。
私の心は切なくなった。