正月の事である。
私は嫁と、嫁の実家に86で帰省する事になった。
嫁の実家は長野県飯田市である為、山を越えなければならない。
私は高速道路を薦めるも、嫁は下道で行く事を頑なに譲らない。
私は雪が怖かったが、嫁の
「大丈夫!大丈夫!」
の言葉を信じて、国道151号を行く事になった。
すると案の定、新野の山頂手前で雪が降って来た。
私は嫁に引き返す事を薦めるも、嫁は相変わらず
「大丈夫!大丈夫!」
私は雪道を走った事が無い為、経験者の嫁の言葉を信じて先に進んだ。
しかし、私の不安は的中してしまった。
新野の山頂付近で、道路に雪が積もり86がスリップして前に進まなくなってしまった。
ふと助手席に目をやると、嫁はケラケラ笑っていた。私は嫁に、殺意を覚えた。
私は、86を何とか道路の端に寄せてJAFに連絡した。迎えに来るのに、小1時間かかるとの事。
私は安堵した。
嫁は、義母に連絡していた。
義母は迎えに行くから、86は道の駅に置いておけとの事。
私は呆れて、嫁に一人で帰省する事を薦めた。
嫁は、私と二人で帰省したいと強く訴えてきたので、義母の提案を断るように言った。
JAFが来てくれて、86を積載車に載せた。
JAFの運転手に
「先に進みますか?引き返しますか?」
の問いに、私は迷った。
勿論、嫁の言葉は私には届かない。
が、先に進む選択をした。
せっかく、嫁の両親&義妹が楽しみに待っているのだ。私の意固地で、台無しにするのは忍びない。
私は心の中で、強く決心した。
冬に86で、飯田に行かない。そして、嫁の言葉を信用しない。