目が覚めると、時計の針は9時を指していた。
少し焦った。チェックアウトの時間を確認すると、まだ少し余裕があった。そして、朝食もまだ食べれる時間だった。
私は食堂に向かった。
食堂のおばちゃんに挨拶をしようとした時、初めて気付いた。声が出ない事に。
私は、昨夜の事を思い出す。調子に乗って、カラオケを歌い続けていた。
私は会釈して、席に着いた。
朝から、カレーが用意されていた。
私はカレーを頬張った。
朝食を終え、フロントの従業員に尋ねる。
「前回宿泊した時に携帯電話の充電機を忘れて行ったのですが、忘れ物は残してないですよね?」
するとフロントの従業員は、
「すいません。無いです。今回は、充電機ありますか?無ければ、貸出しますよ。」
私は驚いた。そんなシステムがあるなんて!
そして、私はチェックアウトして86に乗り込む。
程良い山道がある。そして、大好きな高速道路だ!
予想通り、山道は空いている。攻めるわけではないが、余裕のある速度で右へ左へハンドルを切る。
アッと言う間に山道が終わり、愛鷹PAに着いてしまった。少し物足りないが、何事も腹8分目の私だ。調子に乗る前に山道が終わって、幸運だと思わねば!
愛鷹PAで一服をし、おまじないをする。
これは、漫画の影響だ。
私は、ローギアに入れ走り出す。
高速道路は、渋滞こそしていないが混んでいた。
私は、大人しく一般車線をクルージングしていた。
そこへ、横暴な運転をするシルバーのベンツとグレーのハイエースが現れた。
私は、呆気にとられた。
こんなに混雑しているのに、強引に何台抜こうが何時間変わるのだろうか?命を落すリスクのほうが高いのではないのか?
と考えていたが、気付くとグレーのハイエースの後ろに付いていた。
1台前のベンツを見ると、時折ハイエースと差が付く。流石ベンツ、速いなぁ。
私の小さい頃、ベンツは憧れの車だった。まだ車がステイタスだった時代だ。今では、ただの移動手段に成り下がってしまった。
私も機会があれば、ベンツを所有してみたいと思っている。
気付くと、自宅付近だった。
私は、ベンツとハイエースに頑張ってくれとエールを贈り高速道路を降りた。
不思議なモノだ。出逢った時は批判的だったのに、別れ際には愛着が湧いていた。