私が会社の喫煙所で一服していると、西尾君が笑顔で現れた。
「内緒でお願いします。池田さん、新車で86買いましたよ。」
と、第一声が放たれた。
私は、内緒が苦手だ。
「内緒なら、私に話さないでくれ。」
池田さんは、私の前では素知らぬ顔である。彼女でも無い私に、サプライズなのだろうか?
そんなサプライズも、森さんの一声で崩壊してしまう。
「池田、86買ったぞ。しかも、AT。」
AT?何故?
私は、池田さんに疑問を持つ。
そして、その疑問を池田さんにぶつける。
「腰が痛くて、今の車CHRのサイドブレーキを踏むのも難儀だ。」
更に疑問が深まる。
腰痛で86は、自殺行為ではないのか?
まさか、坂道発進の恐怖から逃げたのか?
池田さんの86が短命で無い事を、切に願う。
池田さんは、事故が絶えない。周囲にも、心配されている。
納車は、早くて1月らしい。
西尾君と池谷と、池田さんの86納車祝いのツーリングを企画しようと思う。
さて、ドコが良いだろうか?
2月2日、遂に池田さんの86が納車された。
私自身、池田さんの86を拝見したのは2月4日なのだが、後期の86は前期の86よりカッコ良く羨ましく思える。私の86には劣るが。コレは、負け惜しみでは無く、86に乗る皆が思う事だ。自分の86が1番だと!
私は池田さんから、耳を疑う発言を聞く。
ルームランプをLEDに交換すると言う。
私の記憶が確かなら、私が86をイジろうと池田さんにシフトノブを交換しようかと相談した時、池田さんは、
「そんなショボいトコから、イジるなよ!」
と私に言い放った。そんな池田さんがルームランプのLED化だと!
私は思わず池田さんに、
「そんなトコ変えて、速く走れるのかよ!」
と暴言を吐いてしまった。
何故人は、己が否定した事をするのだろうか?私は、不思議に思うと同時にとても不愉快になる。
私は当然池田さんに、86と池田さん自身の慣らしを促す。
池田さんの笑顔が堪えない。
「86は、楽しい車だ!」
と連呼する。
早く池田さんの慣らしが終わり、私の86との決戦の日を私は待ち侘びている。
池田さんとサーキット場にてバトルするのは、春頃になるだろうか?その時には、是非西尾君にも参戦して欲しいモノだ。