ある仕事帰りの時の事である。
私は、普段どおり制限速度を守り安全運転に努めていた。ルームミラー越しに、異常なスピードで迫って来るヘッドライトが映る。
私は直ぐに左端に寄せると、物凄い勢いで追い抜いて行ったが、信号待ちで追いついてしまった。
どうやら、行き先が一緒らしい。
高速道路に乗ると、異常な加速で走り去って行く。
私は、86の可能性を信じてアクセルを全開にした。しかし、前の車は小さくなるばかり。
「何て加速をする。性能差か!」
私が追いかけてるのに気付いたのか、前の車はスピードを緩めた。やっと追いついたかと思ったが、前の車はまた異常な加速で、走り去って行った。久しぶりの屈辱だった。
「次は、負けないぞ!三本槍のエンブレム」
私は帰って直ぐに、三本槍のオープンカーをネットで検索する。
マセラティのグランカブリオという車だった。
次の日、元走り屋の池田さんにこの話をして
「金にモノを言わせやがって!」
と私が愚痴ると池田さんは
「お前が言うな!」
と怒られてしまった。
確かに私の86も、お金がかかっている。
私は、大人しく納得した。